元三菱地所の商品企画部長さんとラジオ番組で定期的に対談をする私は、フランス人カップルの住む家の写真を見せた。商品企画部長さんはいち早く引き戸に目をつけた。「もともと日本の家は、柱と屋根と床で出来た大きな空洞だった。引き戸はいわばそれを仕切るために登場したのです。○○さんがおっしゃるとおり、戦後日本はずっと洋式文化できましたから、ドアヘの憧れがすごく強かった。敷居や唐紙、障子、日本人はもうそれを全て捨てたかったわけです。
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ところがいずれ子どもが巣立つと、家族構成も変化するし、高齢化社会になれば、家の中を車椅子で移動するようにもなる。すると、ドアと違ってゆるやかに仕切る引き戸は、わざわざリフォームして壁をぶち抜かなくても、可変型間取りが出来上がる。高齢化社会の今、とても便利だと見直されているのです」そう考えてみると、ドアと引き戸の機能は全く逆だと気付いた。ドアは閉めてあるもの。引き戸は開けてあるもの。一緒に居ながらも一人の時間を過ごせるし、家族の気配を感じながら一人にもなれる。引き戸をスライディングウォール(動く壁)と呼んだ外国人がいたが、まさにその通りだ。しかも、他の設備同様、引き戸の性能も格段に進化している。引き戸の有効性を語る商品企画部長さんは現在、メックecoライフという住宅分野研究所の代表を務める。私は商品企画部長さんの話を聞いてあることを思い出した。「そういえば、明星ハイツに取り付けた引き戸が指先で簡単に開くのですよ。大工さんの話では下に戸車が付いていて、戸当たり寸前で衝撃音が出ないようゆっくり止まるのですって」マンションにとってトラブルの一つ、戸を閉める時の音も今や緩和された。昭和の頃、力いっぱい引かないと開かなかった、立て付けの悪い引き戸に苦労させられた記憶がある。それが今やフィンガーモーションで開閉できるのだからすごい。